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9月1日
しまった。
ぼくの頭にこの言葉が浮かんだ、これほどこの状況を的確に表す言葉は存在しない。
学校から少し(といっても結構な時間)歩くと、公園がある。
公園の池の周りには種々の植物や木があり、季節毎の違いを色濃く表現している。
例えば、春は桜が咲いているし、夏は新緑が生き生きと見受けられる。
秋には橙色に染まった木々が湖畔に映り、冬には夏の新緑が嘘のように裸の木が堂々と立ち並び、雪が降らなくても一目で冬と分かる雰囲気を醸し出している。
ぼくの家の近くにもそれなりに大きな公園があり、そこでも四季をいい具合に表現してくれているのだが、何しろ広すぎる。これといった一つの場所が無いのだ。
それに比べて、学校の近くの公園は小さい。だが、狭い場所に季節が濃縮されているようでぼくは好きだった。同じ場所でもはっきりとどの季節かが分かる。
そんなわけで、今年は季節毎に写真を撮り、四季を見比べようと思っていたのだが、今年の夏は知らない内に去ってしまった。
近年、9月の序盤はまだ完全に夏という雰囲気が続いていたので、油断していたのかもしれない。
丁度ぼくが夏期講習であった時に雨続きで、休日だった時には全く雨が降らなかったのも実に具合が悪い。
かわりに今月は、彼岸花でも見に行こうか。9月の中盤は、彼岸花が綺麗らしい。
9月2日
学校が、本格的に始まった。
避難訓練だった。実にこの学校はきまりが悪い、防災の日に避難訓練をやらないで今日やるとは予想外である。地震とは予想外の時に来るのだから、まあそんなもんなのかもしれない。
朝に雨が降ってくれていたおかげで、グラウンドがぬかるんでいる為体育館で開催された。運が良かった。
地震対策だというのに、校長は生徒のモラルの話に殆どを割いていた。
いつも思うのだが、こういう校長の説教じみた話をありがたく受け止める生徒はいるのだろうか。
仮に生徒のマナーが悪かったとして、それを全体に注意した所でマナーの良い生徒からは何もせずに注意されたわけだから反感を持つし、全体への注意で行動を正す生徒がマナーがなっていないはずもない。
ぼくは眠くてそれどころではなかったのでともかく、周りの生徒に殆ど校長の話に注目する様子はなかった。
まあ、その後の防災の話も誰も聞いていなかったようにぼくは見えたので、そもそもの集会とは得てしてこういう物と考えた方が自然か。