読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

14

学校の近くの道路に、大きな木があった。

大きな木は道にまで出ており、その枝は街灯すらも包んでいた。

秋になると、その木の落ち葉で下の歩道が完全に埋まってしまうほどだった。

ある日、ぼくが重要な参考書を学校に忘れてしまって、参考書を回収する為に夏休みの朝早くからとぼとぼと学校に向かい歩いていると、木の前で工事が行われていて、その下に作業員がいた。

「この木、切り倒すんですか」

「ああ、道路に出ていて危ないから切り倒すんだよ」

「この木の種類は、なんと言うのでしょうかね」

「それは知らないなあ」

なんとなく木を切り倒す理由が気になったので、作業員と少し話をした。木の種類はたんに興味から気になっていただけだが、どうにも年配の作業員にも分からなかったようだ。

工事が1日で終わったのか、切り倒される様子がどのようであったのか、長くはその場に留まらなかったのでぼくはそれを知らない。

8月の頭になって、夏期講習が始まるとぼくは再び学校に行く事になった。

その時、最初は木の事など気にも留めなかったが、後に思い出した。あの木はどうなったのだろう。気付いたのが授業中だったので、ぼくはどことなくその日は授業中にも関わらずそわそわとしていた気がする。

ぼくはこういう事をうっかり忘れてしまう事が多いので、授業中にひとたび忘れないように気をつけようと思うとずっとそれについて考えてしまう。

帰り道に木のあった場所へ寄ると、本当にその木はなくなっていた。

木のなくなった場所がすっかり更地になっていたというのだから、その木がいかに巨大であったかが伺える。

結局、それなりに気になってはいたものの実際に木が無くなっても特に寂しいなんてことはなかった。特に思い入れもないので当然のことだが。

それから一週間ぐらい経った後だろうか。ぼくはふとその木のあったあたりを見上げると、街灯には切られた木の枝が、執念のように絡み付いていた。