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小学生の時、ぼくの母親は精神を病んでいた。

当時のぼくにはそう見えなかったが、幼稚園の時からパニック障害を持っていたと、中学に入ったぼくは本人から直接知らされた。

別に母親に何か思い入れがあるわけでもなく、そもそもぼくは家族とあまり関わりを持ちたくないと昔から思っていたのでショックには思わなかった。

べつに両親が明日突然死んでも、今まで通り学校に通えるアテさえあれば実際のところあまり思うことはない。

普通の人ならば、もう少し親に対して思い入れを持っているのだろうと思うと生まれを恨みたくなるし、自分が非道な人間ではないのだろうかという罪悪感に襲われる事もある。

それはそうと、そんな母親だったので何度も新興宗教の施設や、寺や神社などに連れて行かれた。

同じ場所に二度連れて行かれた事が殆ど無いのは不思議だが、大事になった事が一度も無く、今になって何かが起こるというのも無いのは非常に幸運だと思う。

その中で、一番印象に残っているのは家から40分ほど電車に乗らないといけない場所だった。

外から見える範囲だと一見普通の受付だが、奥に進むと壁に心霊写真が貼ってあったり、各地に札があったり、やはりその手の場所らしい。当時のぼくはずっとDSをやっていて気にも留めなかったが妙なものは多かった。

中にはカーペットの床の広場のような所があり、たくさんの人がいた。特にお爺さんや、お婆さんが多かったように思える。話の内容は殆どが他愛のない世間話だった。

ぼくの母親もその世間話に参加していた。これも別に怪しい会話ではなかったように思える。

また、そこではマッサージのような事もやっていた。マッサージをしているのは40代くらいの女性で、親にマッサージを受けるように言われたが、少々頭への刺激が強かったぐらいで他はあまり記憶にない。普通のものだったと思う。

帰り際に、階段を登った先にある仏壇だか神棚だかよくわからないものに頭を下げることになった。ぼくはこのような宗教施設に行くのは慣れていたので、いつも通りに頭を下げた。

何を崇めているのかも分からないし、妙に施設が狭かったなあ。